【 幸 せ の 花 を 裂 か せ ま し ょ う 】

サイケデリックジュブナイル小説
九月十五日 諏訪風神祭 C-01b にて頒布予定
A5 52頁(トレーシングペーパー表紙+カラー口絵+本文 紙、インク色変え)遺影風ブックケース付き
1000円

<あらすじ>

 女の腕の中には、ふたつのガラス製の円筒がふたつ。それぞれの中身は、ホルマリンに漬けられた胎児だった。
 片方は黄色人種の女児。
 産まれていれば、宇佐見蓮子と名付けられた娘。
 しかし彼女の心臓は再び鼓動することはなく。また右目の眼窩は不自然に平たい。
 もう片方は白色人種の女児。
 産まれていれば、マエリベリー・ハーンと名付けられた娘。
 しかし彼女の気道は一度たりとも外気を吸うことなく。また左目の眼窩は奇妙に凹んでいる。
 彼女らは産まれ落ちる筈だった。健やかに育ち、やがて出逢う図面が引かれていた。
 時空を掴む眼と、異界を別つ眼で、世界を探る運命だった。境界をたどり、彼岸に恋い焦がれる宿命を持っていた。
 更には眼の能力と引き替えに、彼女らが追い求めた幻想のための郷を創り出す役割すら負っていた。
 しかしそれを知るものはいない。
 しかしそれは予定の話。
 存在しなかった遠い過去の話。
 もうあり得ない遙か未来の話。
「此度は私の勝ちですわ、八雲様」
 子供を殺した女が笑う。
 未来を壊した女が笑う。
 世界を滅した女が笑う。
 つまらないほど楽しそうに。